小説2

 夏真っ盛りの8月のある日。
    毎日暑い日が続き、日を追うごとに苛立ちが増す。
    そんな中、一際苛立っている奴が一人・・・。

    「暑い~・・・。なんで夏はこんなに暑いんだよ。
    英二!なんとかしてよ、この暑さ!!」
    「んなこと言われても無理に決まってんだろ・・・。
    俺だって暑いんだからさぁ。」

    不二だった。
    あまりに暑いので英二に無理を言っている。

    「僕の方が暑いの~。」
    「ホントに不二は夏ってダメだよな。さすが冬生まれ。」
    「褒められても嬉しくないよ。」

    (褒めたわけでもないんだが・・・;)

    「う゛~ん・・・あ、そうだ!涼しくなる方法があるよ。」
    「ん~?」
    「怪談?前にネットしてて面白いの見つけたんだよ。」
    「俺パスッ!それは嫌がらせか?俺がそーゆうの嫌いだって知ってて・・・。」

    英二は即答で断った。不二のする話はマジで怖い。
    しかし不二は引かない。

    「知らないよ、そんなの。僕が話したいだから。」

    (なんつー自己中だ・・・。)

    聞かないとまた五月蝿いんだろうなぁと思い、仕方なく聞くことに・・・。


    「コレ結構有名な怪談なんだけど、英二ネットしないだろうから。
    ネットしてるとよく宣伝広告が出てくるの。あれウザイんだよね。
    それで何も書かれていないし、何処にもリンクされてないのが出てくるらしいんだ。
    しかもその広告らしきものは血みたいに真っ赤なんだって。」
    「ふぅん。それで?」
    「で、それが出てきたら決して消してはいけない。」
    「なんで?消さなきゃジャマじゃん。」
    「消したら、その人は死んじゃうんだて。」
    「はぁ~?消したら死ぬって・・・。んなバカな。」
    「ここまでだったら大して怖くないよね。でね、それが実際に起きたらしいんだ。」
    「マ、マジ・・・?」
    「大学生なのかな?その人もこの話聞いて、実際に探してたらしいよ。
    それで、本当に見つけちゃって死んだんだって。
    部屋にはパソコンが点いたままで当たりは血で真っ赤になってたって。
    そのパソコンのモニターには赤い文字ですごい沢山の人の名前でいっぱいで、
    1番最後には死んだ大学生の名前が・・・」
    「うにゃ~~!!」
    「何だよ・・・うるさいなぁ。」
    「いや、だって怖いじゃん!!」
    「そう?僕的に怖いと思ったのはこの先。
    その広告を消すとなんか声が聞こえてくるの。
    しかも消しても消しても現れてきて、その度にその声がはっきりしてくる・・・。」
    「こ、声・・・?」
    「あなたは赤い部屋、好きですか?ってね。
    それがはっきり聞こえた時に、部屋は自分の血で染まってるってわけ。
    その声がまた無機質で怖いのなんのって。」
    「不二、それ聞いたの・・・?」
    「んー人から聞いた話だから実際にその声を聞いたわけじゃないんだけど、
    とりあえず人間の声じゃないみたいらしいよ。」
    「そ、そっかぁ・・・。
    でもそれってどうせ怪談っしょ?大学生が死んだって言うのだってどうせ作り話だよ。
    現実にありえるわけ・・・」
    「いや、本当に実在するらしいよ。大学生の話も実話って聞いたし。
    英二のお兄さん、ノートパソコン持ってたよね。
    探してみたら?もしかしたら見つかるかもよ?」

    にこっと笑って不二は言った。

    「見つかるかもよって、見つけたら死ぬじゃん!!」
    「でも見つかるわけ無いって思ってるでしょ?」
    「思ってるけどさぁ・・・。」


    その日の夜。
    英二は兄に借りたノートパソコンの前にいた。
    昼間に聞いた話なんかどうせ噂話に過ぎないと高をくくっていた。
    けれど好奇心の強い英二。
    もしあの話が本当だったらと思うと寒気がする。
    ネットを始めて数十分。

    「何だよ、全然見つかんねーじゃん。やっぱただの噂なんだよな、所詮。」

    見つからないことにホッとするのと同時に少しつまらなかった。
    例の広告探しをしていた英二も次第に飽きてきて、いつしか当初の目的を忘れ、
    自分の趣味のサイトを回っていた。

    更に数時間後。

    「・・・赤い・・・広告・・・。」

    画面に突如現れた赤い広告。

    「コレが不二の言ってた・・・。」

    確かに何も書かれていないし、何処にもリンクされていないようだ。
    消したら死ぬ。
    その言葉が頭の中を巡ったが、やはりどうなるのか気になる。
    英二は自分の好奇心の赴くまま、恐る恐る×ボタンをクリックして消した。
    どうせ何も起こるはずがない・・・。
    しかし予想に反して、消したはずの広告が再び現れる。
    その際何か聞こえた。

    「・・・・・・」
    「ん?今・・何か・・・。」

    再度その広告を消すと同じように現れ、声がさっきより少しだけはっきりした。
    けれどまだ聞き取れない。
    同じことを数回繰り返していると、いよいよ声がはっきりしてきた。

    「あなたは赤い部屋好きですか・・・?」

    何とも恐ろしい、人間の声とは思えないような声だった。
    聞いた瞬間背筋が凍った。

    「これ・・・不二が言ってた通りじゃん・・。てことは俺は・・・」

    その途端ゾクッと寒気が走った。
    後ろに誰かいる・・・?
    振り返るとそこには・・・


    「うわぁぁ~~~!!」
    「英二?大丈夫か?」
    「え!?あれ?俺あの広告見つけて・・・」

    目の前のモニターにはさっきまで見ていた普通のサイト。

    「パソコン返してもらおうと思ったら、お前寝てるみたいでさ。
    しかもなんかうなされてたし。」

    英二はいつの間にかうたた寝をしていたみたいだった。

    あれは夢だった・・・?
    そっか、そうだよな。ありえるわけないじゃん。
    けど・・・あれはマジで怖かった・・・。


    翌日。

    「も~その夢まじで怖かったんだから!!
    振り返ったら目の前に人間じゃない変なのが立ってて、手にでっかい鎌みたいの持っててさぁ。
    それで俺の首切り裂いて部屋が血で真っ赤になんの!!」

    英二は昨日見た夢をありのまま不二に話した。
    真剣に話す英二を黙って聞いていた不二は、何故か急に笑い出した。

    「英二ってそういうのに影響されやすいんだね、ホント。」

    何が可笑しいのかクスクス笑っている。

    「何が可笑しいんだよ!!人が真剣に話してるのに!」
    「いや~何も可笑しくないよ。
    ただ、本当に例の広告探したっていうのはちょっと驚いたな。」
    「不二が探してみればって言ったんじゃん。
    けど結局見つかんなくて、あんな夢見たんだよ。」

    いつまでも笑い続ける不二。そして、

    「見つかるわけ無いよ、その赤い広告は。何処を探してもね。」
    「どーゆうことだよ?実在するって言ったじゃん。」

    昨日と今日で言っていることが矛盾している。

    「もう言っても良いのかな?
    あのね、昨日話したことは全部僕の作り話なんだ。だから絶対に見つかるわけないんだよ。」

    凄く可笑しそうに腹をかかえて笑っていった。

    「はぁ!?マジで!?」
    「うん。元になる話は一応あるんだけど、ほぼ僕の作り話。
    で、それを信じて英二が本当に探しちゃうとはねぇ。英二ってホントに馬鹿だね。」
    「な、なんで俺が馬鹿になるんだよ!!
    不二の話し方が上手いから、誰でも信じちゃうよ。大体、どうしてそんな嘘つくんだよ!?」
    「お褒めに預かり光栄です?
    大丈夫、英二は馬鹿なとこが良いところなんだから。
    どうしてって言われてもねぇ・・・暇だから英二をからかって遊ぼうかと思ってね。
    夏だから怪談バージョンにして?」

    にっこりと当たり前のように言ってのけた。
    そんな不二に英二は怒る気も失せ、

    「どうして不二は俺で遊ぶんだよ・・・。
    結局いつもこうゆー結末になるんだよな・・・。」
    「まぁ、でも涼しくなったでしょ?良い夢も見れたみたいだし。」
    「良くねェー!!不二のバカ!!」

    再び怒った英二の尻目に不二はアハハと笑っていた。


広いネット上。
もしかしたら本当に例の広告、見つかるかもしれませんよ。
あなたは赤い部屋好きですか?

END


    *あとがき*
    はい~ちょっとした怪談ものにしてみました。
    この赤い広告ってのは私が実際にネット上で知った話です。内容そのままです(ォィ
    まぁ少しは変えてありますが・・・。
    フラッシュで見たので声もついてて少々怖い。
    他の人は凄く怖いって言ってたけど、私は大したことなかった・・・。
    さて、何だか私には少し珍しいタイプの話でしたね。
    ほのぼのでもシリアスでも死ネタでもない。ギャグの一種?よく分かりません;
    う~ん・・では、また次回★







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